【読書録】 死別の悲しみに向き合う─グリーフケアとは何か (講談社現代新書)

この本・著者について

著者は坂口幸弘氏。現在、関西学院大学 教授で、研究テーマは、死別後の悲嘆とグリーフケア。主著に「増補版悲嘆学入門」、共著に「グリーフケア」など。

初めて読んだ悲嘆に関する本がこれでよかった

私自身が死別を体験し、悲嘆の真っ只中にありながら、「この体験は一体何なのか」という疑問が生まれてきました。そんなときに、初めて読んだ悲嘆に関する本がこれでよかったと今となっては思っています。

というのも、グリーフケアの概説を一通り行うだけでなく、著者ご自身が第一線で遺族と向かい合ってきたためか、私たちの悲しみにも寄り添ってくださっており、苦しみや悲しみが受け入れられていく感覚を体感することができるためです。

また、死別以外では体験し得ないであろう体験や感情にも随所で触れてくださり、「こんな風に感じてしまうのは自分だけではないんだ」「こんな風に苦しむ自分は変ではないんだ」という安心感も得ることができます。

くわえて、著者が再三述べているように、死別という経験はとても個別的なものです。そんな千差万別な読者の誰にとっても、次に読むと良い本や、考えるべき事柄の道標を、引用等を踏まえながら示してくれる、研究者らしい博覧強記ぶりに助けられるという点でも、まさに「死別の悲しみに向き合う」ための第一歩として最適な一冊だと言えるでしょう。

続きを読む